女医

ままにならないことの多い人生だが時折、ちいさな幸せを見つけることもあって、それがまぁ、その日の最高値でドルを売ったとか、レンタルで新作のビデオを首尾よく借りられただとか、本当にちいさいものなのだ。振り返って考えるにつけ、じっと手を見る。
『女医』をみる。演出のタルさは相変わらずだが、”りょう”の演技には鬼気迫るものがあって、蒼白の能面のようなあの顔で裏切った男に詰め寄る場面など、思わず震え上がる。いや、ひとごとながら。件の男が一生、逃げられないと思ったと観念するセリフには知らず頷いたものである。