『世界最速のインディアン』を観る。昔、朝日ソノラマにエスパーオートバイシリーズというジュブナイルがあって、インディアンといえばオートバイという刷り込みがあるのだが、これはそのスプリングフィールド産のオートバイの話であり、アンソニー=ホプキンス演じるバート=マンローが、ニュージーランドからボンヌヴィル、ソルトフラットを目指すロードムービー。劇中、幾度となく
My name is Burt Munro.
と繰り返される自己紹介が、やがてかの気高き騎士の名乗りを想起させる脚本の完成度は高く、序盤から繰り出されるいくつかの名セリフと職人の手つき、反して何となく覚束ない人生の輪郭だけで、涙腺が開きがちになってしまう。肝心のトライアルについても手を抜くことなく緊張感のある速度描写であり、今なお破られていない最速の記録に説得力を与えている。傑作。