アメリカ中西部に進出して異様な低温をもたらした北極からの極渦は、この何年かでわりあい頻繁に聞くようになった現象だけれど、気温が-10度を下回ることがある地域に住んでいる身からすると、-30度は人外のイメージで、屋外活動の結果、死者が出ることになっても不思議はない。-40度の世界ではバナナで釘が打ているというCMがあったけれど、なに、-30度でも十分、打てるからには、なんであれ、芯まで凍てつく温度に囚われているというわけだ。
Month: January 2019
衰亡史
厚生労働省による統計不正は欧州危機の引き金となった2009年、ギリシアでの同様の問題を想起せざるを得ないとは何度か書いたことだけれど、ギボンがローマの繁栄と対比させた古代ギリシアの没落は、この国に蔓延る閉鎖性と多様性の欠如、さして根拠のない自国礼賛に重なって、ますます歴史は繰り返すと思わざるを得ない。
製造と報酬
家人の要望で空気清浄機を導入したのだけれど、この分野に知見がないということもあってECサイトで高評価のものを半ば自動的に購入して、案外、安いものだなと思っていたのである。その効能がどういうものかについては今もってあまり興味がないのだけれど、届いた機械はそれなりの大きさで、作りも悪くなく、これが2万円弱というのでは何を儲けているのかちょっとわからないくらい。家電製品をいくら作ったところで、なるほどこれでは儲かるまいと改めて思ったことである。いやはや。
遅かれ早かれ
統計不正にかかわる調査の不正という倫理の機能不全状態にあって、ことが正常に裁かれるのであれば組織的な不正の背景にある政治的な圧力による歪みと、ことを不正でしか糊塗できない現実の露呈によって国の信認は失われるだろう。もし、裁かれないのであれば、ますます増長した政権によって、不正は再生産され、さらに大きな災厄となってこの国に降りかかるに違いない。そもそも、統計にかかわる人員の削減の果て、弱体化した行政システムが止むに止まれず行ったごまかしというのであれば、この国の衰退は速やかにすすんでいくだろう。
アンブレイカブル
『アンブレイカブル』を観る。もちろん遥か昔に観たことがあるのだけれど、老人力の恵みによりかなり新鮮に楽しむことができたことである。いやはや。地続きの続編である『ミスター・ガラス』にはブルース=ウィリスが出演しているのはもちろん、主人公ダンの息子であるジョセフ役を18年の時を経て同じスペンサー=トリート・クラークが演じているという話なので、ちょっと観たくなっている。その評判をあまり聞かず、予告編を観る限りかつての世界観とはだいぶ違うようなのだけれど。
END DAY
『END DAY』を観る。津波、隕石、パンデミック、科学技術の暴走というカタストロフィックイベントの発生による破滅の日を、ドキュメンタリー風に描いたBBCの番組で、48分の間に壊滅的な大惨事が4回起きるという俺得な内容。テレビ番組なりにチープな映像ではあるけれど、並行世界風に繰り返し滅びる世界という趣向は英国的な人の悪さが透けて嫌いになれない。
ユピテルとイオ
『ユピテルとイオ』を観る。地球が荒廃して、人類が木星の衛星イオに脱出し深宇宙の探査を画策している未来、地表にわずかに残った人々の滅びの日々を静かに描いたディストピア映画。天文台で暮らし生物の再生を研究する女性と、ある日、その岬に気球で降り立った男との交流が、木星への最後の脱出船の出発までのカウントダウンとともに描かれ、クライマックスにはコレッジョの絵画『イオ(ユピテルの愛の物語)』も思わせぶりに登場したりする。
滅びのイメージの断片をつなぎ合わせたような映像は美しいし、漂う詩情も悪くないのだけれど、そこまでという惜しさがあって内容的にはイマイチ。だいたい、『イオ』とはあんまり関係のない話ではないか。