寝言

賢人の教えに従って寝言は寝てから言うことにしているが、 自分の寝言で目が覚めるという経験はあまりしたことがなかったので、びっくりしている。その前に見ていた夢もかなり鮮明に覚えていて、とうとう現れた黒幕に掴みかかっている場面で声が出たという流れなのだけれど、黒幕というのもほとんど会うことのない会社の人で、これまたどうして悪党という配役になったのか、己が内なる脳の働きが不思議でならない。

再帰構造

このクールのテレビドラマ視聴にはちょっと落ち零れた感じがあって、『面白南極料理人』のほかは引き続き『まんぷく』を楽しみにしているくらい。ようやくチキンラーメンが完成して、3月はカップラーメンの誕生に話が移るのだろうけど、開発物語は以前のエピソードとほとんど同じ展開をなぞりつつ、観ているこちらがお約束の流れを予期しているという朝ドラの王道フォーマットを意図的に再構築して組み込んだメタな脚本で、無論のことこれは確信犯の所業だけれど、なかなか面白い。『ひよっこ』は先行作品を参照しつつ朝ドラのコードで物語が出来ていたけれど、本作は自己参照しつつストーリーを編んでいくという仕事で、なかなかよく構想されていると思うのである。

再発明

サブスクリプションに移行した時には既存ユーザーの反発をかったUlyssesだけれど、Macではこれ以上に優れたテキストエディターはないという不動の評価で、どちらかといえばツールは渡り歩く方なのに、こればかりは毎日使い続けてはや数年。あまり不満もないのだけれど、律儀にアップデートは続いていて、このたびはバージョン15のプレビューが紹介されていたのである。しかし画面の多重化だのキーワードサーチの新機能だのとは、iOSにコピーアンドペーストが実装された当時を彷彿とさせる今さら感で、リデザインというのもなかなか大変なことである。

pursuit of happiness

この歳になると幸せそうなひとも不幸せと見えるひとも、それぞれに不幸せと僅かな幸せをあわせ持っていることぐらいは弁えておかねばならない。それが我が子であれば、もちろん幸せを願いつつ、しかし幸福の追求は個人に委ねられた「国民の権利」であるからには、幸あれかしと祈るほか何ができるだろう。

面白南極料理人

堺雅人が主演をした『南極料理人』も悪くなかった記憶があるけれど、牧善之介こと浜野謙太を主人公にしたテレビ大阪の今期のテレビシリーズは、そもそも同じ原作をひいているとは思えない異様な面白さで毎週、楽しみにしている。『バイプレーヤーズ』的に濃いところの集まったキャストと、深夜テレビの空気感が漂う密室劇は、30分に三つのエピソードという構成で素晴らしさしかない。

ブレードランナー 2049

『ブレードランナー 2049』を観る。ドゥニ=ヴィルヌーヴの監督作品であるからには、それなりの映画になっていることはわかっていたのだけれど、今まで観ていなかったのは全く不徳の致すところという他ない。タルコフスキー風の画面が唐突に現れたりするわり、晦渋さよりは分かりやすさが勝って163分もある尺が長いという感じでもないのである。前作へのリスペクトはもちろん、エントロピー増大の果て現出した黙示録世界は悪くないし、長雨続きという雰囲気だったオリジナルに比べると、水は死と再生の場面に使われていて、全体に象徴が機能しているあたりが好み。脇腹から流れる血というのは、もちろんキリスト的な世界観を感じさせて、そう考えるといろいろ面白い。

浄化中

さきに買い求めた空気清浄機は、リビングに佇んで24時間、黙々と働き続け、何もなければグリーンのライトを点灯し空気の清浄なるを教えているわけである。いわば職人的な寡黙さで働くその姿にはある種のプロフェッショナリズムが滲み感銘すら受けるわけだが、ときどき、こちらが近くにいるタイミングで黄色がかった浄化中のモードに移行することがあって、おや、働いているなと素直に感心するばかりではいられない。いや、ちょっと感じが悪いのではないかとすら思うのである。まったく。