Apple TV+で『フィンチ』を観る。太陽フレアにより終末を迎えた世界で、文明の遺物を探索しながら生きながらえているエンジニアが、自分が死んだ後に犬の世話をするためのロボットを作る。このロボットと犬と共に、予測される気象イベントの脅威から逃れるためにセントルイスをたち、西海岸を目指すロードムービー。トム=ハンクス版の『地球最後の男』という趣向だけれど、人類の生存を脅かすのは気候であり、装備なしには外出できないというあたりに2020年代の気分があって、今日的な設定になっている。
犬好きには共感しかない話で、最後の10分は涙なくしては観られない。たとえ人類が滅びたとしても犬には生き延びてほしいというのが全ての飼い主の願いであれば。人間の登場人物は事実上、トム=ハンクスひとりであり文字通りの独壇場である。いうまでもなく、うまい。『グレイハウンド』に引き続きApple TV+での独占配信ということになるのだけれど、配給権を獲得したAppleにもトム=ハンクスをTV+のブランドアイコンにしたいという目論見がありそうである。