『今ここにある危機とぼくの好感度について』を観る。渡辺あや脚本によるNHKの土曜ドラマ。大学を舞台にして、第2話までは論文の不正告発と当局による隠蔽というシリアスな題材を扱っているし、「今はやりの権力者による言葉の拡大解釈や読み替えと同じであり大変危険」「読み替えとはつまり意味の捏造」というセリフを滑り込ませる脚本家の意図は明確だけれど、狂言回しの主人公のいわゆるノンポリ的態度が喜劇性を際立たせて面白い。そのユーモアもさることながら、板挟みにあって倒れていく人たちを労るように物語は編まれていて、同じ渡辺あや脚本の『ワンダーウォール』に通底する静かな痛みがある。鈴木杏がまず最高にいい。
聖火リレーはどうやら引き続き行われているらしいのだが、沖縄からは白いテントの幕で囲まれた無人の駐車場を数名のランナーが聖火を運ぶ異様な遠景が伝えられ、このイベント自体が既に穢れそのものであるということを知る。北海道では過去最多の新規感染を確認したのだが、5日にマラソンのテスト大会を控え、剣ヶ峰にあって思考停止の状況にあると見える。