『三体III 死神永生』を引き続き読んでいる。上巻の半ばを過ぎてから、物語のスケールはさらにアップして、そういえばこのところハードSFといえるジャンルの作品をあまり読んでいなかったと反省している。暗黒森林という壮大な宇宙観にもとづいて、ここまで風呂敷を広げた劉慈欣という作家の仕事には感心するばかり。ことに、宇宙的な距離の暴虐をきちんと描いているところには好感しかない。後半にかけてぐいぐい面白くなるのもいつもの通り。
『三体』世界の人類は基本的に気分によって右往左往する烏合の衆という扱いなのだけれど、オリンピックは断固として強行し、しかし期間中は感染防止のためテレワークに協力せよという本邦の有り様も似たような集団的な愚かさと終末感があってかなりやばい。コロナ禍においてもみえる人間の愚かさを煮詰めて示しているところに作者の慧眼があるとして。