『その瞳に映るのは』を観る。ナチス支配下のデンマークで、英国空軍によって行われたゲシュタポ司令部への爆撃。そこで起きた寄宿学校への墜落と誤爆によって125名の民間人が犠牲になった史実をもとにした映画。その日、その場所に居合わせることになった人生の交差を描き、非常に優れた映画表現で複雑な世界の構造を示そうとしている。演出の緩急と暗転の巧みさは部分だけでなく全体の構成にもあって、標的誤認に続く一連の混乱から壮絶な救出作業に続くクライマックスは巧緻を超えて凄まじい。傑作であろう。
そしてこれもまた今、ウクライナで起きていることを想起させる映画なのである。もちろん、配信の予定はかねて決まっていたものであり、結局のところ我々の世界ではこうした悲劇が繰り返しあらわれ、救いといえるものは見当たらない。