Kindleで早川書房のタイトルがセールになっていて、これを眺めているうちポチポチといくつかを買い求めてしまう。デジタルのライブラリには既にいわゆる積読が並んでいるにもかかわらず。本というよりは電子データの利用権に過ぎないこれらを、安いと思ってしまう心理と行動は行動経済学が予想する人間の不合理性として名前がついているに違いない。
で、エルヴェ=ル・テリエの『異常 【アノマリー】』を読み始めている。隅付き括弧がタイトルにあるのは珍しいと思うのだけれど、『L’Anomalie』という原題に異常を訳語として当てるのに躊躇があるのはわかる。アノマリーという言葉のWikipediaが言うように、アノマリーは評価というよりは現象であり、その原因が解明されたあともその現象を示して使われる時間軸をもち、よりインクルーシブであることで世界観のタテヨコを感じさせる含意があるみたい。日本語がアノマリーに相当する単語をもたないということ自体に意識的だという点で、この翻訳は信頼できる。