『エルピス -希望、あるいは災い-』の最終話を観る。第9話に重たい新事件を持ち込んできた脚本が、どのように物語的な結末を用意するのかとわくわくしていたのだけれど、2020年10月、コロナ禍にマスクを着用しつつ、どんな夢をみればわからないといいながら、やけに明るい雰囲気で未来に向かって開かれたエンディングは期待を上回って着地する。つづくPremiere Proの編集画面そのままのエンドクレジットは、差し入れのリリー・フランキーまで網羅して制作へのリスペクトを表し、同時に物語のメタ構造を示して我々にこれからを問いかける。2022年は『エルピス』と『鎌倉殿の13人』が放送された年として記憶されるだろう。
源範頼もとい秘書の大門亨が消された事件の結末をみないとしても、記者の笹岡が終わっていないと叫ぶ通り、終わったこととしないことこそが重要であればドラマとしてはよく出来た展開ではなかろうか。正しいことも悪いこともない世界で、象徴的に白をまとう浅川が黒の斎藤と手打ちの握手をする物語である。
劇中のニュース8が扱うトピックにオールブラックスが言及されるのは、オリンピックの黒幕である森元首相がラグビー推しであることと無関係ではないだろう。結局はこのスタンスの明確さこそ、物語の奥行きをきちんとパースしてこのドラマを真っ当な仕事にしたのである。