アポカリプス小説が好きなので、ときどきその目的でAmazonをうろついたりするのだけれど、キース=トーマスの『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変』はファーストコンタクトものであり、インタビュー形式のオーラルヒストリー小説でもあるというので反射的に買い求めてしまう。『World War Z』が極北であるように、滅亡とその口碑は絶妙なケミストリーを生み出す組み合わせなのである。
本作はやや生真面目なつくりで、興味のない向きには全く面白くない可能性はあるとして、趣味を同じくする特定読者には楽しめるであろう。『WWZ』があれほど面白いのは、元ネタのわかるさまざまな仕掛けが仕込まれてもいたからだけれど、そのあたりの遊び心はあったとしてもわずかとみえる。そしてタイトルの通り、ダリア・ミッチェル博士の手記が世界の終わりを語ることになるけれど、結果、視点のモンタージュや場面転換の大きさによるスケールの効果は減殺されていると思う。世界の終わりも自国中心のエピソードというのは、あまりにもったいないというものではなかろうか。