人間であることをやめるな

半藤一利の『人間であることをやめるな』を読む。筆者の感慨から昭和天皇が『日本のいちばん長い日』の映画を観たことを知る。もちろん、原作の書籍も読んだということになる。そこにあった思いは今となっては知る術もないとして。2021年に亡くなった後の刊行で、いくつかの原稿を取りまとめた体裁だけれど、幼い頃、東京大空襲を生き延びた筆者が伝えようとしたことにはブレがない。そして2010年代の後半までに語られた懸念は2022年現在、悪い方向で的中しているとみえる。最後のエピソードは宮崎駿監督の『風立ちぬ』についての一文だが、来年の『君たちはどう生きるか』が戦中世代のほとんど最後のメッセージになるのではないか。