『エルピス -希望、あるいは災い-』の第9話を観る。ここにきて政界が絡むレイプ事件の揉み消しという話を組み込んできた脚本の登場人物が、権力ってのは瞬殺しかないんだよ、と語るのである。腹が据わっている。2022年の筆頭に挙げるべき作品は、いややはりこちらの方だろうと、内なる評価を改めている。
気がつけば僕はすっかり孤独だ。いつの間にかひとりぼっちで、正義のために孤独に戦っている。今や僕の友達は、真実だけだ
そう独白する岸本拓朗がかつて、自分に言ったのと同じ言葉が、内部告発者の切迫したセリフとしてリフレインする。
自分の罪深さを忘れて生きていくなんて、僕にはできない
饒舌な脚本が企んだこの繰り返しこそ、人を人としてとどめておく最後の言葉で、希望か、あるいは災いとなり得るメッセージであるには違いない。大事なのは種類がたくさんあって、バランスが取れていることとはいえ、あなたは私であるという共感を、本当の言葉として語ることができるかということが結局は彼我に線を引く。村井が激怒したのは、まるきり嘘でしかない言葉に対してである。
第9話は岡部たかし演じる村井の回で、迫真というべき葬儀場シーンでの斎藤との邂逅は全編でも屈指の名場面だろう。捨て台詞のかっこよさと、これに対する鈴木亮平の表情の奥行きには震える。