地球の果ての温室で

アメリカに続きカナダが、領空を侵犯した未確認飛行物体を撃墜したと発表する。実際には米軍のF22がこれを行なったらしいが、飛来する物体への反応は逡巡なく激烈なものとなり、事態はエスカレートする一方にみえる。いや、これが中国のSIGINT機材でなく、他の星系からの使者だったらどうするつもりなのか。

『地球の果ての温室で』を読み始める。『わたしたちが光の速さで進めないなら』のキム=チョヨプの長編で、ダストと呼ばれる物質がもたらした大厄災のあと、一応の再建を果たした未来の物語。環境に適応し変異を繰り返して繁茂するモスバナと呼ばれる植物と、それを調査することになる主人公というのが導入の設定なのだけれど、この物語が書きすすめられたのは、ロックダウンのさなか、外出もほとんどできない状況にあってということだから、現実にも呼応するところがある。

その事情が日本語版への序文では、ソウルにある作家のためのレジデンスで、窓の外の世界に伝染病が広まっていくというのは、本当に終末後の世界に入り込んだかのような体験だったと語られるのだが、アーティスト・イン・レジデンスで小説が書かれるということ自体にちょっと感心してしまう。もしかしたら本邦にもあることなのかも知れないけれど、こと文筆の助成については韓国に文化と呼ぶべき懐の深さがあるような気がする。