このところ激しく強権的な政府の姿勢がことさら目立つけれど、コロナ感染症の扱いを5類にするという話でも、またひとつ事例が加わることになる。この数ヶ月で万の単位の死者を出したあとも老人を中心に自宅で死ぬに任せるというどころか、この機会にマスク不要論まで浸透させて積極的に感染を拡大しようという話の持ち出し方には、さすがに酷薄であるという以上の動機を感じて困惑するのだけれど、観光を中心としたサービス業にあまりにもコミットした国の有り様をみていると、感染症などなかったかのように考えたいという勢力はある程度の力をもっているということであろう。表面的には今年はサミットがあるという理由の説得力が際立っているとして。
ほとんど結論ありきの5類移行を政府が考える利得を中心に説得を試みるメディアというのもさすがに少ないようだが、命の軽重を当然のように語る有象無象の登場が、噂される世論誘導スキームの実在に説得力を与えている。日中戦争における新聞の戦時動員が軍部の積極的な意図に基づいて行われたことを考えれば、同じ発想があったとして不思議はないし、この時代、この国であればそれはNHKの支配とインフルエンサーの動員を通じて再現されるだろう。NHK受信料不払いに対する2倍の割増金が総務省によって認められたのはこの1月のことで、そんなところではきっちり政治的な調整が行われているのである。