正直言うと『騎士団長殺し』は積読の状態で、地層の下に埋もれた状態なので読了の目処も立っていないのだけれど、村上春樹の新刊『街とその不確かな壁』はいそいそとこれを買い求める。久しぶりに紙の本で購入したから、一応は気合いも入っているのである。まず、コロナ禍の影響を受けて紡がれた物語自体に興味がある。
村上春樹でいうと、オールタイムベストは『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』という流派なので、佇まいの非常に似た本作が楽しみというのも大きい。1985年の新潮社版は司修の挿画が記憶に残るものだけれど、今度の新刊のタダジュンのカットもよく似た雰囲気を醸して、その趣向もいい。