『非常宣言』を観る。ソン=ガンホとイ=ビョンホンのダブル主演による航空パニック映画。チョン=ドヨンが国土交通省の大臣、バイオテロを実行するちょっとサイコな犯人をイム=シワンが演じており、その構えは韓国映画においても大作というべき作品であろう。
冒頭の空港シーンはドキュメンタリーっぽい空気の演出なのだけれど、その質感がエアロゾルで感染すると思しき「ウイルス」の不穏な描き方に繋がっていくあたりが見どころ。しかし、実を言ってそれがウイルスであれば目視できるはずもなく、「粉」として描かれる場面もあって謎は深まる。機内に広がる咳が不安を煽るあたりはいいとして、パンデミックの時代の映画にしてはバイオハザードの扱い方は少し雑という気がする。『FLU 運命の36時間』あたりから、進歩している形跡がほとんど窺えないのである。
とはいえ、舞台となる旅客機の離陸に合わせて展開する前駆的事件の発覚や、緻密な飛行準備段階の描写から、離陸しゆっくりと上昇していくボーイング777の姿といった前半の演出は定石を外さず、なかなか見応えがある。
後半も悪くはないのだが、日本との緊張関係を前提にした演出は仕方ないとして、乗客の自己犠牲の精神が発露する展開はちょっとやりすぎだし、ソン=ガンホは見せ場を作りすぎというものではなかろうか。