『ゴジラ-1.0』を観る。小笠原諸島の大戸島から始まるゴジラ70周年記念作品。呉爾羅の前触れとして、深海魚が浮かび上がってくるという不気味な描写はいいのだけれど、特攻機の着陸という話の発端が物語を支配する情緒を予告してやや不安な感じがしなくもない。山崎貴監督の脚本はややトリッキーにその予想を回避するのだけれど、まぁ、どうなることかと思ったものである。
そういえば、ゴジラは戦争で命を落とした人の怨念の集合体という設定の過去作もあったけれど、本作は1954年版に遡りその『ゴジラ』に色濃くあった戦争の影の、より直接的な表現を目指したには違いなく、それはある程度、成功しているようだ。重巡洋艦の高雄が海中からの光線によって爆沈するあたりにも初代ゴジラのイメージがあって、やりたいことは明らかなのである。そう考えるとドラマパートも必要であるには違いなく、子役の泣き声さえオマージュになっていると思う。上陸にあっては、国会議事堂まで含めて初代ゴジラが破壊するはずのあたりをあらかた焼き尽くしてこれを先取りしているのが興味深い。この後の時間軸に1954年版ゴジラの出番はなく、ワダツミ作戦がオキシジェンデストロイヤーのイメージとなったのも、それを宣言しているようである。