『がん -4000年の歴史-』を読む。著者のシッダールタ=ムカジーは『遺伝子』を読んだことがあるけれど、執筆はこの本の方が先らしい。自身の家族史に始まる『遺伝子』には書かれるべき内容であるという気迫を感じたものだけれど、本作も医師でもある著者の専門分野を扱って筆は時空を往還し、がんにかかわるあらゆる歴史が詰め込まれている印象で非常に読み応えがある。単に博識である以上に饒舌な語り口に感心しているのだが、人類が試行錯誤してきた外科的医療の歴史には恐ろしいという感想が先に立つ。さして根拠のない拷問を可能にするのが医師という権威であれば、そのあたりには今日も大差ない可能性さえある。いやはや。