『C’MON C’MON』を観る。A24の制作で、全編がモノクロデジタルのマイク=ミルズ監督作品。ホアキン=フェニックスは、ラジオ局のジャーナリストを演じ、拠点のニューヨークだけでなくデトロイトやニューオリンズといった荒廃を経験した町の子供たちにインタビューをして、その音声を記録に留めている。ロスに住む妹の事情で、甥のジェシーを預かることになってしばらく過ごすうち心を通わせていく。
A24に期待される良識的な内容の全てが盛り込まれたような落ち着いた内容で、静かな言葉と語りを通じて関係が修復されていく物語には力がある。ジェシーを演じるウディ=ノーマンは時々、出現する驚くべき子役のひとりで、ホアキン=フェニックスとほとんど二人だけでストーリーを駆動して陳腐なところが何もない。そして、録音された言葉が何ごとかを語る構成は秀逸。記録された平凡さが不滅の何かに転じるその作用が映画そのもののことであるかのように、エンドロールの最後まで思わず聴き入るような奥行きを生んでいる。