台風

この前夜、台風の本体は遠く九州にあって、しかしその大きな回転は海上から水分を多く含んだ大気を本州沿岸に吹きつける。日本各地で大雨が降り、道路は冠水して、鉄道は雨量の増加にともない至るところで止まる。

そういうこともあろうかと、出張移動を早めていた当方が都内のホテルで安眠を貪っていた頃、中央本線は夕方から東京都から山梨にかかるあたりの雨が規制値を超え、走行中の特急は途中の駅で立ち往生となる。この遅延は300分を越え、目的地の新宿に着いたのは午前4時近くとなったそうである。車中では早速、車掌に喰ってかかる乗客が出現し、人は食料に群がったということだが、なるほどそうした民度であれば、小惑星衝突によって文明崩壊が迫るくらいの天変地異では世紀末的な荒んだ世界が俄かに現出するシナリオにも説得力がある。