虎に翼

今週の『虎に翼』はいよいよ寅子が高等試験を突破する運びとなったのだけれど、その過程では国、社会、家庭のあらゆる柵が友の志を砕いていく。その溜めから、初の女性弁護士となった自身の祝賀会の雛壇で、怒っていることを語る主人公、それを聞いてなお黙殺しようとする新聞という展開で、またしてもよく出来た脚本と構成なので感心する。

iPad Pro

そういえばApple SiliconがもうM4となり、これを搭載したiPad Proが発表されたけれど、このところタブレットは完全にサブ機となっていることもあって、あまり関心が払えていない。iPod nanoより薄いという表現は今やイメージできる人の方が少ないだろうというものだが、そもそも処理速度と驚愕の薄さにどこまで価値を認めるべきかは悩むところ。それに円安による価格レンジのシフトが重なって、日本での売上はかなり苦戦するのではなかろうか。

RoOT

『RoOT』を観る。このドラマも第6話まで来ていて、別地点から始まったストーリーは、『オッドタクシー』と同化して今や忠実な実写版といった感じ。単独でも楽しめる雰囲気はあるけれど、オリジナルを観ていないとよくわからないという話になりかねない印象ではあって、先に積読だった分を片付けたのは正解だったといえる。主人公の探偵二人は変わらずいい。

このところ、咽頭炎と熱、鼻水といった症状の病を身の回りでよく聞くのだが、風邪というより、どうやらRSウィルス感染症の流行なのではないかと思っている。コロナからこっち、人類集団の免疫システムには甚大な問題が起きている気がしてならない。そして、この日の人口動態のニュースは、昨年からのコロナ死者は国内で16,000人を越えているという話を伝える。見て見ぬふりをしているうち忘れていたのだけれど、やはり、病がなくなったわけではないのだ。

新演出

『虎に翼』は引き続き、気合の入った脚本で物語を紡いでいる。ハ=ヨンスが演じる香淑が特高に目をつけられた経緯が明かされるのだが、朝鮮の人たちが同胞と語らう場面が朝鮮語の会話が字幕入りで描かれていて、その演出にはあえてこの場面を組み込もうという意図がみえて、ちょっと感動する。リアリティというよりは、定型と違う世界を構築しようという意思の表れだと思うのである。

アーガイル

『アーガイル』を観る。『キングスマン』のマシュー=ヴォーンの新作スパイ・コメディ。予告編とは全く違う方向に話が進むのはいいのだけれど、この世界観では、それも含めて予定調和という気がしなくもない。全体に大味であるのは作風というものだとして。クライマックスのアクションの馬鹿らしさは、かなりのものである。あからさまにCGを多用した場面なので、いいぞ、もっとやれという気分にはならない。身も蓋もない話だが、139分もの尺も、たぶん90分くらいに収められたのではなかろうか。

ALICE

Webの記事を読んでいて、Asset Limited, Income Constrained Employedを略してALICEという所得層を指す造語があることを知る。社会保障の網にかかるほどでなく、かといって家賃や医療費を払うのに十分な所得を得ているわけではない多数の労働者層がこれにあたり、アメリカでは30%近くがこうした世帯だと考えられている。

そのこと自体は現状を正しく整理しているとして、ALICEという言葉が、当然のことながら『不思議の国のアリス』から引いたものだと考えれば、同じ状態を維持するためだけに全力で走ることを要求される「赤の国」と同じ状況に置かれた人々なのだという意味を重ねていて、そのセンスに感心する。赤の女王は無論、新自由主義的な政策ということになる。

オルソ

『シン・ゴジラ:オルソ』を観る。Amazon Prime Videoは『ゴジラ -1.0』が配信され始めたのにあわせて歴代ゴジラの布陣も補強しようという豪気な振る舞いで、実は『ゴジラ -1.0』のモノクロ版の『ゴジラ -1.0/C』も同時配信になっている。『オルソ』は『シン・ゴジラ』のモノクローム版だけれど、カラーグレーディングの様子もいい感じで、その名の通り、正統の怪獣映画という雰囲気を醸して心意気がいい。

この物語は何回も観ているけれど、フクシマの原発事故にかかわる記号のインパクトは往時よりやや薄れ、加齢と忘却を自覚せざるを得ない。コンクリートポンプ車と避難民のリアリティは、かつてもっと切実に感じていたはずである。そして現実にはフクシマの惨状はほぼ何も変わっていないにもかかわらず。