『川っぺりムコリッタ』を観る。松山ケンイチが河口の町に流れ着き、塩辛の工場で働く男。ギリギリの生活には事件というほどのことは何も起きないのだけれど、日常は生と死の境界にあって、どうにもならないまま生活は流れていく。もちろん、水辺は生死のあわいにあるものなのだ。時間を過ごした価値は、その者にしかわからないというのだけれど、そういうこともあるのかもしれないと思わせるところがある。頭使わず手を使え。そして、食のささやかな充実で生の復権を見せていくシンプルな映画表現が悪くない。いのちの電話の声に聞き覚えがあって、誰だろうと思えば薬師丸ひろ子である。キャストは全体に素晴らしい。
この日は勤労感謝の日。このような祝日を、どのように祝えばいいのか、現代日本は見失っているところがあるような気がしなくもないけれど、近頃では『海に眠るダイヤモンド』が近い世界観の時代を描いているような気がして、そう考えるとあの面白さはノスタルジアに起因するものでもあるのだろうか。