Apple TVで『ミッドナイト』を観る。全編をiPhone 15 Proで撮影したという触れ込みの短編映画。三池崇史監督は、原作の手塚治虫の漫画のイメージに寄せた絵作りを企んで、見事な世界観を現出せしめている。賀来賢人がまた、主人公ミッドナイトの雰囲気をちゃんと醸し出しているのが素晴らしい。iPhoneの性能はともかく、このセンスが全てでなかろうか。なかなか楽しい。手塚治虫のここまで忠実な実写化というのは、なかったに違いない。
映画
メタモルフォーゼの縁側
『メタモルフォーゼの縁側』を観る。ウェブコミックを原作とした2022年の映画。岡田惠和が脚本を書いている。劇中に、出てくる人がみんな優しい、みんな頑張ったという作品評のセリフがあるのだけれど、基本的にはそんな感じの物語。ボーイズラブ漫画をきっかけに75歳と17歳が友だちになって、季節が一巡するという優しい世界のお話なのである。
宮本信子が『マルサの女』に出演していたのは1987年のことだから、もちろんこうした役回りにも違和感はないのだけれど、宮本信子と芦田愛菜は実年齢に近いところで演じていて、その芦田愛菜がやっぱりいい。『さようならマエストロ』を観始めてからこっち、芦田愛菜のファンである。全力疾走のシーンがいくつかあるのだけれど案外、小柄のその姿が凛々しい。エンディングロールの二人によるカバー曲『これさえあれば』も悪くない。
ヘレディタリー/継承
『ヘレディタリー/継承』を観る。トニ=コレットが神経質な雰囲気に入った役柄には独特のテンションがあるけれど、その緊張感は最後まで高まる一方。アリ=アスター監督の長編デビュー作で、『ミッドサマー』に直結するような狂気はここにも描かれている。いやもう、これは嫌な感じ。独特の雰囲気のあるミリー=シャピロが演じるチャーリーと、その陰惨な末路は夢にさえ出てくるであろう。この種のホラーを遡ると『ウィッカーマン』あたりは同じ系統にありそうだけれど、比較的に支持を得ることができたというのが大きく異なる点かもしれない。
この日、米軍はガザに食料を投下する作戦を開始する。即時停戦の決議に反対しつつ、それを必要としている人々の数に比べれば微々たる物量の支援であれば、政治的デモンストレーションに過ぎないと批判されても仕方あるまい。バイデン政権はますます支持を失い、トランプの再来をもたらすことになってもおかしくない。
パレード
Netflixで『パレード』を観る。冒頭から大震災の場面が続き、あらゆるものがあらかじめ失われている世界の描写が続く。主人公の長澤まさみは坂口健太郎に連れて行かれた不思議な待合で、自身が死んでしまったことを知らされる。場面はたびたび、震災直後の避難所に戻るが、その描写はどうにもリアルでやりきれない。それぞれの登場人物がどんな未練を残して亡くなったかを解明していく物語であれば、それも当然として。
まず、横浜流星という役者は顔立ちが整い過ぎているがゆえに損をしているところがあって、早逝した若頭の役回りからは、ずいぶんと達者な役者であることがわかると思うのである。なんかかっこいい。
この話はどこへ向かうのだろうと思わせつつ案外、物語的な結末が用意されているのだけれど、震災の記憶を重ねて引用する意味はあったのだろうかという気はする。
作りたい女と食べたい女
『作りたい女と食べたい女』を引き続き観ている。第2シーズンも残すところあと2話で、全編の完結ということになるみたい。物語は野本さんと春日さんの同性カップルが、世間の風の冷たさに戸惑う展開。同性婚を認めることさえしないこの社会に鋭く異議申し立てをする脚本は、制作の意図を明確に示すもので好感がもてる。NHKのドラマ制作の現場には以前から一目置いてはいるけれど、ダイバシティについてのメッセージはたとえば『舟を編む』にも織り込まれていて、この崇高な役割自認と一貫性によって、世の潮流も徐々に変わっていくに違いない。
SHOGUN
ただGoogle Chromeを導入するのも芸がないし、かといってMicrosoft Edgeはクセが強すぎるというわけで、ChromiumベースのArcを導入してみる。Apple Silicon用の開発が先行していて、今のところ無料で使えるのだけれど、Swiftで開発されているだけあって動作は軽快だし、The Browser Companyという社名を名乗るだけあって、ブラウザのユーザビリティには哲学を感じる。何かと使い易いのである。Raycast用のエクステンションもあって、この体験は素晴らしい。
ディズニープラスで配信の始まった『SHOGUN 将軍』の第1話を観る。舞台は慶長年間と思しき日本。雰囲気で安土桃山を現出せしめ、しかし当然のように不思議世界の日本ではあるので、いい感じのファンタジーになっている。お金はかかっている様子だし、大作なりの見応えがあってゲーム・オブ・スローンズ的とでもいうか。
ビューティフル・ドリーマー
Amazon Primeに『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』が表示されたのでつい、これを観てしまう。いったい何度、観たかわからない作品ではあるけれど、たぶん20年ぶりくらい数十回目。『不適切にもほどがある!』に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を18回観たというくだりがあったけれど、サブスク以前の視聴習慣には、同じものを繰り返し観るというモードがあったのである。もちろん、何度だろうが面白いものは面白いし、細かくは忘れている画面があったりするので油断ならない。
この日、午前中からの雪は夜まで降り続ける。幸い降雪量はさほどでもないので深く積もるということはないのだけれど、それも朝方には凍ることになると思うのである。