どちらかといえばキングは苦手なのだけれど、思い立って『ザ・スタンド』を読み始めている。とはいえ、完全版でただでさえ長いところにきてキングなので、いつ読み終えることができるかちょっと想像がつかない。
本
アリスのままで
最近、映画を観た『アリスのままで』の原作小説を丸善でみつけて読み始めている。映像は概ね原作に沿っている様子だけれど、そもそも映画ではアリスの若年性のアルツハイマーが遺伝性であるという設定については、かなりさらりとした扱いとなっていて、いささか不自然な感さえあったので、原作ではどのような書きぶりだったのか、興味があったのである。もとは自費出版の小説だったということだけれど、一人称をわずかにずらした印象のある、神の視点ならぬ医師の視点風の語り口は独特で、作者の専門性を窺わせるものであり面白い。
宇宙兵志願
ハヤカワの近刊『宇宙兵志願』を読む。『火星の人』と同じく、KDPで人気が出た作品ということだけれど、あれほどの完成度はないとして、処女作にあるべき熱量は込められており悪くない。
タイトルの通り『宇宙の戦士』の流れに連なるSFだが、新兵の錬成にはじまり『ブラックホーク・ダウン』を想起させる市街戦、一転してエイブラムス版『スタートレック』みたいな近惑星圏から大気圏内での戦闘が描かれており、ロマンスの要素もあるので内容はかなり盛り沢山なのである。作者は同時代の映像の影響を受けているし、訳文も悪くないので読みやすい。
主人公は異能もなくヒーローというわけでもなく、政治的な主張もほとんど感じられないのが特徴といえば特徴で、結局は「つづく」という話なのでいろいろ投げ出した感はあるとしても、それでも読ませるのは立派といえよう。
ビッグデータ・コネクト
『ビッグデータ・コネクト』を読む。この作者の小説は時々ゆうきまさみの絵柄で再生される気がするのだけれど、近未来感が『パトレイバー』を想起させるからなのだ、きっと。
『オービタル・クラウド』もそうだったけれど、あからさまに現実に材をとっているあたりは嫌いじゃなくて、Tポイントカードやらauやら、芋蔓式に個人データを共有しようとしてくる輩に辟易している身からすると多少は溜飲も下がるというものである。
一方、日本年金機構のサイバー騒動みたいにどうしたってレベルの低い話も現実にはあるわけだけれど、そのあたりの実際は作家の想像力を超えている。いや、現実の粗雑さは想定の範囲にしかないが、物語として語られる程度をもたない。
ピルグリム
Kindleに入っている『ピルグリム』の冒頭を読み始めたところ、途中で止められず早くも第2巻に取り掛かっている。再読だが、ページターナーというのはこういう小説をいうのであろう。
ジャングル・クルーズにうってつけの日
『地獄の黙示録』を久しぶりに観た流れで生井英考の『ジャングル・クルーズにうってつけの日』を本棚から取り出して読んでいる。アメリカという社会が遡っても半世紀に満たない現代という射程において、さまざまな断面を見せることに興味は尽きないのだけれど、本邦も同じような激変期にあって、おそらく10年後には敢えて語らなければならない歴史を現下に編んでいるということではないか。将来の歴史的評価に資するべく、記録という作業そのものが重要という気がする。
葦と百合
引き続き奥泉光の未読作品を探して読んでいる。紙の書籍では絶版になっている作品もあるのだが、そこはKindleの偉大さで『葦と百合』が電子化されていてこれを読んでいる。のちの作品につながる雰囲気があっていい感じ。いちいち面白い、導入のサービス精神と物語がいよいよ入り組んでくるあたりの落差が好きなのである。