『ボビー』を観る。アンバサダーホテルを舞台としたグランドホテル形式の物語で、ロバート=ケネディの暗殺を題材にしつつ、しかしボビーが象徴する政治的高貴の不在を描いてブレない。劇中、ロバート・F=ケネディは当時のフィルムの中にのみ存在して、まぼろしのようであり、人々はそれぞれの人生をかかえてアンバサダーホテルに留まるのである。ボビーを待ちながら。監督・脚本で出演もこなしているエミリオ=エステヴェスは不景気な顔に似合わず結構、いろんなことを考えているみたい。なんとなく散漫になりがちな作りとはいえ、通してみれば言いたいことのよく判る映画である。往時のホテルを再現した美術も優秀。