昭和日記

青空文庫で『古川ロッパ昭和日記』を読んでいる。みっしりと書き込まれた日々の記録が、少しずつ変調して戦争に向かっていく。大きな流れのようなものが背後に立ち上がっていく様子が興味深い。稗史やオーラルヒストリーを好む所以だが、日々の細部の積み重ねがそれを生じているわけで、人生に一度きりの仕事だと思えば一層、感慨深い。

アーキタイプ

『両京十五日』を読み終える。いわゆる英雄の旅と西遊記を構成する物語要素に、陰謀と裏切りを加えて上等に煮込んだストーリーは結末まで隙間のない盛り上がりで実に面白かったのである。ことに敵役がその立場を替えながら物語の進行に果たす役割のかっこよさにはしびれる。読中、本邦なら浅田次郎といったあたりの手になる、特に出来のよい小説を思い起こさせる雰囲気があって、大河のような創作の繋がりはさまざまな枝をつくっていると感じたものである。

連休の合間のこの日、市場介入と思われる相場の急激な動きによって円はいったん153円の水準に戻すが、そもそも薄商いの状況でやや空威張りという気がしなくもない。シグナルを強調する効果はあったとして、それも一時的なものであろう。

両京十五日

このところ馬伯庸『両京十五日』を読んでいる。現在、第2巻の半ば、全体では75%の進捗といったところ。この中国産の小説は、明を舞台とした長大な冒険小説で何しろ滅法、面白いのでページを捲る手が止まらない。北京、南京を結ぶ運河を舞台に、王朝転覆の企みを躱し、それぞれの思惑を抱える一行が皇太子を助けながら時間制限のある決死行を展開する筋書きは、正しく明朝版の『深夜プラス1』といった感じ。因縁と呼ぶに相応しく入り組んだ設定が物語の奥行きを作り、定型と期待を外さない作法の良さもあって中華小説の完成度の高さに感心している。

白亜紀往事

劉慈欣の『白亜紀往事』を読む。例によって著者の社会的なシステムへの強い関心が窺える中編で、白亜紀に生まれた恐竜帝国と蟻帝国の共生と相剋というヘンな話。クセが強いが、たまにこういうのを読むと面白いのである。

最近、テキストの作成にはiA Writerを使っている。以前よりよくなくなっている気がするのだけど、実際にはほぼ変わっていないと思う。

虚空の影

Audibleオリジナルに『エイリアン 虚空の影』があったので、これを聴いてみる。朗読というわけではなく、演出や効果音の入ったサウンドノベルなのだけれど、リプリーが登場し、しかしエイリアンの世界と矛盾を生まない仕掛けが施されていて、最後になるほどという感じはあるけれど、かえってこぢんまりとなってしまった気がしなくもない。映画本編との整合など、今や誰も気にしないのではないかと思うけれど、そこを気にするのがファンノベルというものなのだろう。

しかし、主に通勤の車のなかで聴いたのだけれど、効果音がかなりしっかりと入っているので、走行中の異音かと思うこともたびたびで、この種のコンテンツは運転には合わないということを認識する。

リバース思考

昼過ぎから出張。車中でロン=フリードマンの『リバース思考』を読み終える。ひろゆき推薦と表紙にあるあたり、やや身構えてしまうところはあるのだけれど、実践的なプロダクティビティの指南書となっていて、近年わかっている認知と脳の仕組みにまで立ち入ったこういう話は嫌いではないのである。方法を選び、それを実践していくこと自体は避けようがない以上は。それに自覚的であることには、何がしか実利がある。

ヘイリーが大統領選からの撤退を表明する。3年前には想像もできなかったことだが、国家転覆さえ辞さない往生際の悪さを見せた元大統領が再び復権するというシナリオの確度が高まっている。そのこと自体は歴史において繰り返されてきたこととはいえ。

シャーロック・ホームズの凱旋

森見登美彦の新刊『シャーロック・ホームズの凱旋』を早速、買い求めて読んでいる。ヴィクトリア朝京都という発想で既に勝利していると思うのだけれど、予想以上にしっかりとしたヴィクトリア朝で翻案の雰囲気にしない、しっかりとしたホームズもの。そういや、ラノベには寺町三条あたりにホームズがいたと思うのだけれど、そういう趣向ではない、いつもの森見登美彦が楽しめる。

3日間の泊まり研修を終えて夜、帰宅。半年くらい続いたプログラムだけれど、次回にて終了の予定。それに向けて2万字程度のレポートが必要になるので、その準備をしているところ。締め切りは手前にないと、ほとんど機能しないと読んだが、まったくその通り。