『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』を観る。いろいろと物議を醸した内容である。マクナマラ本人と制作サイド、さらには日本語字幕訳出にあたっての解釈に、それぞれの意図が透けて、もとより注意深く観るべきものとは考えながら、全体としては、なかなかによく編集された回想であると思う。副題にはELEVEN LESSONS FROM THE LIFE OF ROBERT S. MCNAMARAとあり、Lesson #1などとスーパーが入るとHow to好きのアメリカ人的類型を想起せざるを得ず、そのうちマクナマラという特別な個性が(何しろミドルネームがStrangeだからね)現在、支配的となっている価値観の大きな部分を体現しているに過ぎないとも思われてくる。Lesson #11は
You can’t change human nature
なので、まぁ、適切な解釈とはいえまいが。
それはともかく、対日焦土化作戦を指揮しキューバ危機では強硬論を唱えたルメイとヴェトナム戦争におけるジョンソン大統領について現時点では批判的なスタンスであるものの、巷間に言われるように自己弁護のための回想かといえば、そういう感じでもない。何しろ国防長官時代の教訓が、答えたい質問にだけ答えるということだったと自身で語っているので、何を誤解されても仕方ないとはいえ。しかしながら、自身のロールに対するスタンスは結局のところ『スペシャリスト』におけるアドルフ=アイヒマンの認識に通底するものがあって、より救いがないといえば救いがない。
本筋とはあまり関係ないものの、中に戦術核を発射する野砲の実験映像があって、これはちょっとしたインパクトがある。