『ボーフォート -レバノンからの撤退-』を観る。イスラエル映画である。レバノン南部のボーフォート砦を舞台に撤退までの状況を描いている。題材としては希有と云えるし、現代の要塞を舞台として装備の考証もしっかりしている様子であり、資料的にも貴重なのではなかろうか。掩蔽壕やら要塞通路やらのつくりは新鮮で、勉強になる。物語は不条理劇のようであったり、ヨーロッパ映画風の内省的なセリフの応酬があったりで、終盤まで静かな展開であるものの、一兵たりとも登場しないにもかかわらず確かに存在する敵の演出に成功して緊迫感を持続している。