ささやかだけど忘れられないいくつかのこと 『ささやかだけど忘れられないいくつかのこと』を少しだけ読み進めるつもりが一気に。巧いな、メリッサ=バンク。物語の大半は主人公のソフィーが出会い、別れた男との経緯を語る連作であり、枚数を重ねれば重ねただけ、ぐずぐずと男の化けの皮がはがれ幻滅が重なるという恐ろしい筋書き、構成でありながら、フィクションと言うには血の通いすぎたディテールに惹かれて怖いもの見たさが勝る。ハードボイルドに近い一人称の加減は絶妙であり、より内面の吐露が濃ければ、なんじゃこの女という反応になったはずである。 共有:TwitterPrint