『チェイサー』を観る。韓国映画を観るのは久しぶりだけれど、ちょっと目を離しているとこのような傑作が出てくる土壌はやはり豊潤なのだろう。残忍なシリアルキラーものだし、登場人物が這いずる現実も無残なものだしで、題材の重量はかなり重く、韓国警察の抱える内情は他の映画でも描かれ見覚えのあるもので奇抜なところはないのだが、キム=ヨンスク演じる無口な主人公が内面の動機を燃焼しつつ次第に推力を増していくあたりが見どころで、それだけでも満腹なのだが、筋書きには容赦がなく、観ているうち肩の辺りに力が入ってくる。最後に洩れる嘆息は画面のこちら側のものでもあって、映画はその勢いによって観客を絡め取ることに成功している。堪能した。