『レボリューショナリーロード』を観る。サム=メンデスの作品であるからには画面にも色彩にも一分の隙もない。レオナルド=ディカプリオとケイト=ウィンスレットが『タイタニック』以来の共演というのが触れ込みだが、物語の方は大向こうの観客が期待するようなものでなく劇中、極めて明示的に語られるように、
knowing what you’ve got, knowing what you need, knowing what you can do without.
についての話である。原作はイェーツであり、脚本もその意図を汲んで非常にレベルが高い。例によって讃えるべき完成度で、サム=メンデスはやはり名実ともに巨匠である。「今のあたしは本当のあたしじゃない」「私はこんな仕事をする人間ではない」というごく一般的な現代の価値観が俎上にあるのだが、その病理を描いて今日性もある。「諦めることさえ出来れば人生も悪いものではない」という認識を涼しく示したのが、ウィラー夫婦が目指したヨーロッパの知性であるというあたりも深い。「話せば判る(もちろん話したいことしか話さない)」という病の文脈がいわゆる夫婦喧嘩によって語られるので、全編がやたらと重いとして。いやはや。その読み方は多層であり、傑作であろう。主演の二人も熱演だが、マイケル=シャノンが『バグ』に続いて神経を病んだ男の役を演じて存在感を示している。