『死霊のえじき』を観る。1985年の作品である。ジョージ・A=ロメロという監督は最近の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』ではジャーナリズムを、『ランド・オブ・ザ・デッド』では資本主義をこきおろしているが、本作で題材にされているのは科学者と軍人の独善性であり、そういう意味では極めて同時代的な題材を扱っているのである。かつて、科学者が胡散臭い人種と思われていた時世があった。したがって、古びていないといえば嘘であり、呼び物のグロテスクな描写にしたところでこの20年で、随分と前進があったがゆえに今や学芸会レベルとなって物寂しい。しかしながら、2008年にリメイクされた『デイ・オブ・ザ・デッド』がこれと比べて上等かといえばそんなことは全くなく、であればゾンビサーガの重畳性こそが人類の、いわゆる進歩を信じていないロメロの思想を顕現しており、『死霊のえじき』はその土台にあって揺るがない。