『あなたは私のムコになる』を観る。この珍妙な邦題が何を意図しているのかはよく判らないが、サンドラ=ブロックとライアン=レイノルズによるロマンチック・コメディ。サンドラ=ブロックも40半ばとなって、そろそろこうした役柄は卒業ということでもおかしくないところ、言ってしまえば年甲斐もなく頑張って、お約束の展開をよく支えている。やり手の上司の偽装結婚に付き合わされるアシスタントがライアン=レイノルズなのだが、父との葛藤やらも配置されたキャラクターが概ね眉間に皺を寄せたような顔つきで演じられ(コメディなのに『悪魔の棲む家』と似たような演技プランというのはどうよ)愛すべき側面がさほど見当たらず、何だかギスギスとしたエピソードばかりなので、主人公と恋に落ちるあたりの説得力には欠ける。ロマンチック・コメディと言えば、そこがポイントだろうというわけで、ちょっと勿体ない。それを補うのが祖母のベティ=ホワイトで、要約するとバアちゃんが言うんだから嫁もらえ、父親とも仲直りしろ、という話なのだから、問題は役者以外にありそうだ。監督のアン=フレッチャーは最近では『幸せになるための27のドレス』でもラブコメをやっていたけれど、お約束通りでありながら釈然としない感じが同様で、コメンタリによるとかなり感覚的に展開を変えているようなので、行き当たりばったりなオーラが全体の納得性を削いでいるのであるまいか。物語の神は細部に宿る。昔の人はいいこと言った。