『おくりびと』を観る。冒頭からちょと狙いすぎのエピソードが下手をすれば鼻につくところ、本木雅弘と山崎努の相性の良さで絶妙な「つかみ」となっていて、後は安心して観ることができる。良く出来ている。葬儀の歴史的遠景に立ち入ることなく、納棺師の所作の端正さで文化の文脈を指し示してみせるあたりのセンスは優れたものであり、こうした身体性はイシブミのエピソードでも補強されていて、なかなかに深みのある脚本だと思えば小山薫堂の手になるものであって才人というのは侮れない。間に合った親子の和解というテーマもよくあるといえばそれまでだが、一方が死んでいるという状況でそれを語るのはよくある話とはとても言えないわけで、題材の妙もよく生きているというべきだろう。個人的には酒田の街並みにも馴染みが深いのだが、セットをうまく使って懐かしい感じの不思議空間を作り出しているあたりのポイントも高い。