『わすれた恋のはじめかた』を観る。アーロン=エッカートはいい役者だと思うのだけれど、日本ではあまり人気がないみたい。ジェニファー=アニストンと共演したロマンスであるにもかかわらず、日本未公開。題材が身近な人の死から立ち直るための自己啓発セミナーで、アメリカ的な精神性が色濃いので無理もないとはいえ。
舞台はシアトルである。『グレイズ・アナトミー』で馴染みのスペースニードルを配した遠景が何度となく映されるけれど、やはり思い出すのは『Sleepless in Seattle』であろう。あの映画と同じく妻を亡くした男が主人公なのである。
ジェニファー=アニストンは例によって40を越えているようには見えない(しつこい)し、シアトルの自然もいい雰囲気だけれど、脚本の練り込みには甘いところも見えて、残念ながら結末の和解はあまりに唐突という感じがしないでもない。さらに言うなら、壁の落書き、エレベーターに乗らない理由など、素材のまま煮込まれていない要素が多く、これが全体に滲み出る説得力を削いでいて、ちょっと残念な感じになっている。この微妙な不足感は、かえって勉強になるという気さえするほどである。