『アリス・イン・ワンダーランド』の封切りを前に、劇場公開終了間近の『アバター』を駆け込みで観る。せっかくなので3Dシステムに対応した映画館で、という訳だが、さほど勢い込むまでもなく、諏訪郡には長野県で唯一を謳う3D対応劇場があって、ここが最寄りである。日曜日とはいえ、来月にはDVDソフトも発売となるタイミングではさすがに空いていて、真正面かぶりつきの席に陣取り、液晶シャッター式の3Dメガネを自前の眼鏡の上にかけるというちょっと窮屈な仕様で162分。
3D効果そのものは前半に面白みがあって、宇宙船の全景や司令室のごちゃごちゃと込み入った描写でこれをやられると無茶苦茶、興奮する。もとより、ディテールの描写だけでご飯三杯はいける質である。それが錯覚であれ、画面の中に三軸を持ち込んだ結果の情報量たるや、映画は『アバター』の以前、以後によっても語られるようになるであろうという感慨と相俟って、通常より高めの料金2,000円が全く惜しくない。
物語の方と言えば、惑星パンドラではワールドトレードセンターを薙ぎ倒すのが海兵隊の役回りであり、資源の上に異文化が根差しているという現実の分かり易い写し絵でもあって、どうやらアメリカの厭戦気分に立脚したテーマを軸としている。本邦の観客であれば、風の谷を思い浮かべるであろう精神性も感じられたりするわけだが、パンドラの世界自体は、かつてどこかで観たようなMYST的宇宙であってこのあたりの描写に強い関心があるわけでもなさそうである。結局のところ、肝心なのはこの密度を構築し得たシステムのほうであって物語ではないという感想はもちろん邪道との誹りを免れないだろうが、やがて発売されるであろうDVDにおいては、映画そのものよりも特典映像で明かされる舞台裏のほうに興味がある。