『アンヴィル! 〜夢を諦めきれない男たち〜』を観る。『スパイナル・タップ』と違って真正のドキュメンタリーで、本編中の言葉を借りればローリング・ストーンズやザ・フーと同様に30年以上も活動を続けているメタルバンド「ANVIL」の、商業的成功からはほど遠い位置にある今を描いている。バンドを扱った映画であるにもかかわらずその音楽はほとんど登場しないし、聴いたとしてメタルの善し悪しが判るはずもないのだけれど、人から軽んじられ、家族からは心配されながら、定義不能の「成功」を求め、「夢」を実現するのだと唇を震わせて力説する様にはもちろんのこと何かしら胸を打つものがある。編集はリアリティテレビ風で、ナレーションも説明もないので、この文脈がどれほど事実に照合しているのかは確かめようもないのだが、中心人物の二人には歳月分の労苦と紐帯のようなものが確かに感じられ、一方で何だってそんなにメタルが好きなのかというあたりにはぽっかりと穴が空いていてるのだけれど、恐らく30年という時間にはそんな問いを無効にするくらいの長さがある。