『オックスフォード連続殺人』を観る。原作は未読。ミステリとしてはなかなかの味わいだし、結末も英国風で悪くない。 とはいえ、小説なら面白いだろうと思われる数学にまつわる衒学趣味が映像ではさほど効果的とならないのが残念だし、 フェルマーの最終定理の解決という歴史イベントを背景として、しかしそれが効果的に使われているとは言い難いのもいかがなものか。ときおり挿入される歴史的エピソードがアンバランスに凝っていることを考えると、密度の濃い原作に対して、脚本の練り方がちょっと甘いのではないかと思われる。イライジャ=ウッド演じる主人公がオックスフォードでの人間関係を構築するプロセスがダイジェストのような慌ただしさで、始まって10分ほどで小説の方を先に読めばよかったと後悔したものである。