ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間 Vol.1

white『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』第1シーズンのVol.1を観る。ティム=ロスが演じる主人公、カル=ライトマンが表情やしぐさから人の心理を読むことで事件を解決していくというテレビシリーズ。小説で言えばジェフリー=ディーヴァーのキャサリン=ダンスが使う「キネシクス」という例の技で、テレビドラマでは『ザ・メンタリスト』が同じようなテクニックを扱っており、ちょっとした流行りになっているのだけれど、いわゆる推理によって遡行的に事実を解明しようというのではなく、表情という刹那の反応から解を導こうというという発想は、ポリグラフ好きの米国人がいかにも好む題材とみえて、妙に感心してしまう。作中、嘘発見器など全くあてにならないという脈絡が随所に語られるのだけれど、根本の原理においては、まぁ、同じことなのである。関係のない話だが、株式市場なら超高速取引を実現してしまうのがアングロサクソンというものであり、情報通信産業において圧倒的な強みをもつというのにも、この国民性が関係しているのであるまいか。こういう発想に馴染んでいなければ、たとえばエシュロンというようなシステムだって生まれてはいないと思うのである。
前進的・統合的推理をする人間は、一連の出来事を説明する仮説を立てようとするときに、「うまく説明できないもの」を軽視ないし無視する傾向がある、と内田樹は言っている。「キネシクス」などその最たるものであり、原理的に例外を許容できない手法なのだが、そこはそれ、人間の底の浅さも知れているというのが現代であって、この身も蓋もない感じは実に今日的。
などと、ぐだぐだ言わなくても、ドラマとしては普通に面白いものであって、少なくとも第1シーズンには付きあってみるつもり。