レスラー

2009-09-26 17:28:40 +0900『レスラー』を観る。ミッキー=ロークがおちぶれて老境にさしかかったレスラーを演じ、かつてリングに上がって猫パンチとも揶揄されるショウを演じた本人との符合はともかく、その熱演から賞賛を浴びた本作だが、シンプルな脚本と演出の出来もよく見応えがある。ことに演出は、全てのシーンに明快な意図を見て取れるものであり、零落したレスラーの生活が釣瓶打ちに語られる前半のテンションは張り詰めたものであって、ある種の類型に過ぎないとも見える日常にリアリティを醸し出すことに成功している。マリサ=トメイ演じるストリッパーは主人公と同様の舞台に立つ存在であり、その対照がまた物語に奥行きを生んでいる。監督のダーレン=アロノフスキーは『ファウンテン』から、がらりと変わった仕事ぶり。ミッキー=ロークのほうは噂に違わぬ演技であり、シルベスタ=スタローンに対してそうであるように、こうした心意気には敬意を表さずにはおられない。