故郷のわが家

『故郷のわが家』を読んでいたのである。いわゆる連作の体裁になっていて全体で九話からなる。老母の死を契機に久住高原の生家を処分することになった主人公が、不思議な縁に触れ幻想の世界をさ迷うという感じの物語で、はじめのうち村田喜代子の小説にしては、ドロッとした感じが希薄でちょっと長閑な感じすらすると思っていたのだが、尻上がりに異界の様相は緊迫し後半の『くらやみ歩行』に至ってその本領が発揮されるという具合で、結末も、ことによったらこれは死のモチーフであるまいかという疑いを拭えず、なかなか一筋縄ではいかなくて読み応えがある。