月に囚われた男

ice『月に囚われた男』を観る。月面なのに重力はほぼ1Gにみえる演出で、全体から漂う雰囲気は『スペース1999』。CGの色濃さがないあたりはむしろ好感を誘う。
サム=ロックウェルは特に好きな役者というわけではないが、ほぼ一人芝居という状況をよく演じている。監督のダンカン=ジョーンズはデヴィッド=ボウイの息子という話だけれど、耐用期限の切れかけた人間が落ち込む非日常の違和感を謎として放置する一方、結構、わかりやすい結末を用意しているあたりに新人監督としての趣味と苦悩が窺われる。よく似たBGMが入っていたり、かなり無理につくりこまれたと思われる設定はそもそもそのあたりを目指していたりで、ソダーバーグの『ソラリス』をやりたかったというのは間違いないように思われるけれど、応援したくなるような種類の妄執であって、そもそもいまどきのイギリスで、『謎の円盤UFO』の正系に連なろうというこうした特撮を撮ろうという心意気を評価したい。