『28 1/2 妄想の巨人』を観る。『舞台「鉄人28号」』のいわゆるメイキングを題材にしているが、これ自体、奥田恵梨華を主人公とした映画でもあって、小芝居と演出が入っている。もちろんタイトルはフェリーニから。
『舞台「鉄人28号」』の稽古の最中、正太郎を目撃したという言葉を残して演出家は失踪。カメラマンの言子は、舞台下の迷宮を彷徨う。という、実に押井守的な記号があの通りの演出で語られ、特に終盤は『紅い眼鏡』そのままの印象で、このあたりの嗜好はどうやら30年来変わっていない。
メイキングならDVDのオマケというところ、これ自体も売り物という商業的な戦略は措くとして何故、こうした作品が撮られたのかというあたりは興味深いテーマであって、このあたりは公開リハーサルを観た業界人が(松岡正剛が出てきたりする)口を揃えて「貶す」というシークエンスに至って腑に落ちる。つまり、やりたいのは弁証法的止揚であって結果、鉄人は空を飛ぶというわけなのだ。いやはや、立派。