高慢と偏見とゾンビ

winter『高慢と偏見とゾンビ』に着手。ゾンビ小説という脆弱なジャンルで最近、話題になっているものであるからには検証せずにはおかれないと思い立ったのも、やはり『WWZ』の影響である。
『高慢と偏見』のパロディに違いないのだが、本歌取りあるいは換骨奪胎というわけにもいかない焼き直し方であって、そのタイトルが指し示す通り、『高慢と偏見』にゾンビを登場させているに過ぎないという無理矢理加減。スプラッタな場面がかなり唐突に継ぎ合わされているのだが、平常のパートはジェイン=オースティンの手になる文章を適当に引用してあるキメラのような前衛ぶりで、ある意味、かなり冒涜的。もとはこうした手法を常套とするレーベルから出版されているということだからアメリカ商業主義の病も相当に根が深い。「全米で誰も予想だにしない100万部を売り上げた」という身も蓋もない惹句を載せたくなる気持ちもちょっと判る。