『キャデラック・レコード』を観る。マディ=ウォーターズやチャック=ベリーを輩出したレーベル、チェス・レコードを舞台に、オーナーのレナード=チェスやミュージシャンたちがブルースからやがてロックを生むというあたりを描いている。アメリカの金ピカの時代を描いた画面の、音楽の占拠率は高く、殺伐とした私生活は若干、後景に退いているので、リアルな伝記というよりは、史実をもとにしたファンタジーのような風合いがある。実際、事実関係というのはかなり自由に組み替えられている。誰もが知っている音楽が横溢するなかでも、製作総指揮にも名を連ねるビヨンセがエタ=ジェイムズを演じて歌う劇中歌は気合いの入ったもので心に残る。主人公のレナード=チェスはエイドリアン=ブロディが演じており、女衒風の役回りはよく合っている。