ジュリエットからの手紙

roses『ジュリエットからの手紙』を観る。金融秩序がいよいよ自壊を始めているこの時節に、いやいや呑気に観ている場合かよと自問したくなるような太平楽なロマンス。主人公はこのところ活躍の目立っているアマンダ=セイフライドで、雑誌ニューヨーカーの調査員。婚約者とのイタリア旅行のさなか、50年前のロマンスにかかわることになり、後ろ手で歩くイギリス男と最悪の初対面というお約束から始まって、イタリアの風光明媚を楽しみつつ、相当に他愛もないエピソードが続くというハーレクイン的ロマンスとなっている。いつしか、男女は恋に落ちるのだが、何故にというその経緯はよく判らなくて、かなり面食らったものである。その機微が理解できない当方が悪いのかどうか。それにしたって、終盤はかなり恥ずかしい展開になっていたと思うのである。
ジャンル的にはそこそこの出来とはいえようが、主人公の婚約者はシェフという設定で、せっかくのオールイタリアロケにもかかわらず、食いものの描写が薄いのに加え、全体的に遊びが少なくて、ソツはないが愛もないという作り手の職業的な印象が残念と言えば残念。
そして、どうでもいいことだが、邦題が何故、原題の通り『ジュリエットへの手紙』とならなかったのかが不思議でならない。