『スモールタウン マーダー ソングズ』を観る。75分の小品で、カナダの片田舎の町で起きた殺人事件を扱っているけれど、特に謎といったものはなくて、警察署長が過去のトラウマを抱えつつ、己が暴力衝動と闘ってこれを克服するという風変わりな話。映像はきれいだし、BGMの効果も面白いのだけれど、何しろそんなわけなので大概は面食らうのではないか。主人公のウォルターは暴力沙汰の過去があるらしいのだが、眼鏡をかけた小太りの男であり、その抑制装置は信仰であるというあたりが、これをハードボイルドと分類することをためらわせる。一方で、どこかコーエン兄弟のような調子もあって、ノーザンカントリーものとしては悪くないのではあるまいか。