ロスト・アイズ

Yellow『ロスト・アイズ』を観る。ギレルモ=デル・トロが製作に名を連ねているスペインのサスペンス映画。視力を失う進行性の病に冒された主人公が、同じ病気だった姉の死の謎を追ううち、怖ろしい目に遭うという話なのだが、スペイン・ホラー特有の雰囲気が特に前半、濃密に漂っていて、古き良き本邦の恐怖漫画を彷彿とさせる。つまり相当に怖い。特徴的な音響によるショッカーもさることながら、この恐怖は視力を失うということの本能的な怖れに由来していると思われ、例えば更衣室のシーンなどは、政治的に正しいことが常に求められるハリウッドでは何かと難しい類の演出であって、ラテン映画のしたたかな戦略と見えなくもない。後半は目が見えなくなった主人公を画面の中心においた演出が効果をあげていて、これまた別種の緊迫感を作り出しており、うまい。知れず、肩の辺りに力が入るので、観終わった後にえらく疲れるほどである。佳作。