押井守の『番狂わせ 警視庁警備部特殊車輌二課』に着手していたのだけれど、折り込みのチラシに入っていた乾ルカ『密姫村』に興味をひかれてこれを読む。いや、パトレイバー世界を破壊しつつ再構築している押井守の小説のほうは、これはこれで(マニアには)滅法、面白いのだけれど。
妖怪ハンターが好きである。昭和30年代、人里離れた寒村で土地の人々の奇妙な様子に気づいて人外の恐怖に呑み込まれていく、というあたりの設定には抗すことが難しい。それなりにリーダビリティも高いので、ふむふむとものの数時間で読み終えたのだけれど、似たような設定があったと考えてみれば『隻眼の少女』である。こちらは新本格というわけではないのだが、舞台装置だけではなく、細部の薄さまでよく似ている。作中の手記の淡泊さには驚いたほどだが、伝奇に面白みを感じるのはその語り口であって、『妖怪ハンター』が漫画であるにもかかわらずあの活字の量で成立していることをひくまでもなく、あまり映像的な書きぶりであっても興を殺ぐだけではないかと思うのである。